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第967話

Autor: 宮サトリ
最初、澪音は自分の耳を疑った。

弘次が本当に弥生に心理医を呼ぶことを許した?

彼女はしばし呆然とし、それから確かめるように聞いた。

「今......何とおっしゃいました?」

あまりにも信じがたく、もう一度確認したかったのだ。

その言葉に、弘次の冷ややかな視線が鋭く彼女を射抜いた。澪音は驚き、すぐに言った。

「すぐに手配します!」

そうして部屋を飛び出し、ちょうど角にいた友作を見つけて、このことを伝えた。

「黒田さんがようやく霧島さんに心理医を呼ぶのを許しました!」

澪音にとっては間違いなく朗報だった。だが、友作の顔には喜びの色は一切浮かばなかった。

まるでそれが良い知らせではないとでも言うかのような表情が浮かんでいる。

その様子を見て、澪音の笑みも次第に消えていった。

「友作さん?これって良いことじゃないんですか?どうして全然嬉しそうじゃないんです?」

自分が余計なことをしてしまったのだろうかという不安が胸をよぎる。

友作は淡々とした目で彼女を見た。

「俺はいつもこういう調子だ......医者を呼んでくれ」

それだけ言って澪音を追いやった。

心理医が到着したとき、弥生はまだ眠っていた。

弘次は起こさせず、目が覚めるまで待とうと指示した。

往診自体が手間なのに、さらに患者に待たされるなど心理医は不快になった。

だが、すぐそばにいた弘次の部下が口を開いた。

「今回は出張費用は三倍で計算させていただきますね」

その一言で心理医の顔色は一変した。

三倍の報酬なら、数時間待たされても構わない。

およそ一時間後、弥生が目を覚ますと、ようやく呼ばれて診察が始まった。

心理医の名前は渡辺遥人だ。

彼は部屋に入ると、まず周囲を観察した。

昼間だというのにカーテンは閉め切られ、明かりは室内の照明だけ。黄昏のような暗さが漂っている。

患者はソファに座っていた。顔立ちは整っているが、あまりに痩せて顎は尖り、薄い衣服の下の身体は弱々しく、頼りなさげだった。

伏せた瞳は生気に乏しく、今にも崩れてしまいそうな印象があった。

傍らには女中姿の若い女性が立っていた。

さらにスーツを着た男が一人。表情は冷ややかで、明らかに支配者の風格を漂わせている。

一目で、この家の主人だと分かった。

遥人は軽く挨拶をした。

「こんにちは」

弘次は
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